圏と関手トップ

2-category周辺


 2-categoryとは、small category(小圏)の高次化である。対象に対し、その間の射があるのが通常のcategoryであるが、さらに射の間の射を導入したのが2-categoryである。Small categoryの圏がenrichしたcategoryと一言で述べられる。これは例えば、objectが位相空間、その間の連続写像がmorphism、そしてその連続写像の間のmorphismとして私たちはhomotopyというのを良く考えているので自然な概念といえるのかもしれない【La07】。2-categoryではobjectを0-morphism、通常のmorphismを1-morphism、morphism間のmorphismを2-morphismと呼んでいる。この概念を拡張していけば、3-categoryや4-categoryといった高次のcategoryも考えられそうではあるが、先にも言ったcoherence conditionというのが尋常なく複雑になってくる。
 一番簡単な例(というかこれをモデルに2-categoryというのは考え出されたのだろうが)は、objectをcategory、morphismをfunctor、2-morphismにnatural transformationを指定したものである。一般にenriched categoryのcategoryはenriched functor、enriched natural transformationで2-categoryをなす。
 また、monoidがobjectが一つのcategoryであるのに対し、monoidal categoryというのはobjectが1つの2-categoryと言える。2-categoryの間にはfunctor(morphism)としてはstrict 2-functor、つまりenriched functorが考えられるが、compositionをup to naturalで保つようなlax functorも考えられる。2-categoryと2-functorによるcategoryにはbiequivalenceをweak equivalenceとして、model structureが考えられる【Lac02】し、Thomason typeももちろんある【WHPT04】【WHPT08】。その際、2-categoryのnerveを取るという操作はいくつか選択肢があって、よく用いられるのはgeometric nerveと呼ばれるものであり、lax 2-functorをmorphismとすればfully faithful functorとして構成できることが【BFB04】にある。またQuillen's theorem Aの2-category versionは【BC03】である。
 2-categoryの圏のclosed monoidal structureで代表的なものが2つ考えられる。一つは単純なcartesian produtを採用するものである。これだとmapping spaceはstrict 2-functor, natural transformation, modificationからなる2-categoryを考える。もう一つはGray tensor productと呼ばれる積構造である。こちらでは、2-functor, psedonatural transformation, modificationのmapping spaceを考えるべきである。ホモトピー論的には後者の方が有用性がある。【Lac02】ではmonoidal model structureにまで言及している。
 2-categroyの(co)limitもまた色々考えようがある。【DS06'】では2-filtered categoryのbicolimitというものを考えている。

 2-categoryに良く似たものにbicategoryがある。こちらはcoherent conditionが2-categoryよりもゆるい。詳しくはLeinstarの【Le98】を見るとよい。Bicategoriesのcategoryのmodel structureもS.Lackが考え【Lac04】、そのnerveやclassifying spaceとしては【Dus02】、あるいは【CCG09】などで調べられている。後者にはThomasonのhomotopy colimitとGrothendieck constructionの関係のbicategory versionが述べられている。具体的には代数の世界でalgebraのcategoryを考えるときに、algebra mapをmorphismにするのではなく、bimoduleをmorphism、bimodule mapを2-morphismにしてbicategoryとなり、その定義からMorita-theoryにも用いられる。幾何では似たような例でcobordism categoryがある。通常のcategoryからmorphismをzigzagにしてspan bicategoryを構成することもできる。Span bicategoryをcartesian bicategoryという視点で見ているのは【LWW09】である。
 Double categoryというとまた意味が違って、2方向にcategory構造がある状況をさす【MV08】。紛らわしいかもしれないが、small categoryのcategoryにおけるcategory objectである。【FPP07】ではsmall double categoryのmodel structure、およびnerveの取り方を考えている。2方向にnerveが取れるのでhorizontal nerve、vertical nerve、そしてそれらを合わせてdouble nerveが考えられる。double nerveはbisimplicial setを構成し、そのdiagonal simplicial setのrealizationをdouble categoryの分類空間と考えている。Double categoryでsmall categoryと同様の操作を3部にわたって考えているのがM. GrandisとR. Pareの二人である。(co)limit、adjunction、Kan extension 【GP08】である。double categoryのpathなんかも考えられている【DPP06】
 2-categoryやdouble categoryあるいはそれらgroupoidと関連の深い概念としてcrossed moduleというものがある。R.Brownが積極的に研究している。

 2をさらに一歩進めて3-categoryという概念も一般的ではないが考えている人もいる。まず定義が様々ある。strictな場合もあるだろうし、tricategoryという弱い概念もある。Gray-categoryというものもあって、そのmodel structureはLackが【Lac10】で考案している。Weak 3-groupoidをhomotopy 3-typeのmodelとして捕らえているのは【Pao06】であり、JoyalとKockはunitの条件を弱める事を考えている【JK06】