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多様体のホモロジー


 PDF |局所ホモロジー群多様体の向き

 多様体のホモロジー群を考えるのですが、Xの一点について、
を考えます。これは局所ホモロジー群と呼ばれていて、切除定理により

という命題が成り立つ。ここから最終的にはH_*(X)を求めたいのだが、そのために重要な消滅定理というものを紹介する。【中岡99】を参照。当たり前のように思えるのだが、n次元多様体のn次より大きい次元のhomology群は消えている。

 また、上記の局所ホモロジー群のn次の生成元を用いる事により、多様体の向きを考える事ができる。多様体の向きとは、単純に言えば1次元の直線上では右左が、2次元の平面上では東西南北が、勝手に決めることができる。「勝手に」とは、別に地図上で厳密に北極点の方角を北とせずとも、一方向を北(たとえそれが南極点をさしていても)とすれば、その逆が南で、東と西も決まるという意味である。ですが、その世界全体で向きを決める場合には、その向きに整合性がないと困る。
 例えば、メビウスの輪を思い出すと、あの世界の一点に立って上部を北と決めてその方向を指差しながら、帯状を移動して戻ってくると逆を指しているはずである。逆に地球のような球面なら、北極点の方を北にして世界一周してきてもやっぱり北は北。地球に向きが決められないとそれはそれで不便である。

 「向きをつける」というのは多様体に限らず、かなり多くの場面で登場する操作のようだ。本によってもその定義の仕方が違う事があるのですが、言わんとしている事はすべての点で向きなるものがあったとき、全体としてそれが整合性を帯びているかというものなのだと思う。

 向き付けられたcompactなn次多様体では、H_n(X)=Zで特別な生成元を一つ決める事ができる。これが基本ホモロジー類、特性類と呼ばれる重要な元である。