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圏と関手の定義


 PDF |圏と関手関手の随伴

 私たちが扱うのは例えば、集合であり、位相空間であり、群であり、加群であり、chain complexであり……と多岐にわたる。共通しているのは、それらの間の関係を表すものとして写像(連続、準同型等を含めて)があって、それによって比較が可能となる。
 こうした対象と関係が与えられた1つの枠組み、イメージで言えば閉じた世界を圏とよび、さらいその圏同士をを関連づけるため関手が定義される。もちろん代表的なのは今まで議論してきたホモロジー群、ホモトピー群はいづれも、

    

という共変関手と考えられるわけである。圏の情報は対象のクラスと射の集合、そして、合成と恒等射の情報からなり、結合則を満たすものである。
 圏と関手の教科書とも呼べるのはMac-Laneの「Categories for the working mathematician」【Ma98】である。大体の事柄はこの一冊でまかなえる。最近は日本語訳版【Ma05】もある。その他にも、【DS95】の序章や、 【西田85】なんかも見てみるとよいかも。

 2つの圏の間の関手によって、圏を同値と見るとき、どのような見方があるだろうか。ひとつには同型という概念がある。つまり、逆向きの関手が存在して、合成したら恒等関手となるものということで圏の同型というものが定義される。しかし、これよりもよく用いられるのが圏の同値というものである。この感覚は位相空間で言うところのホモトピー同値と同じである。
 2つの関手に対して、随伴という概念も重要である。この解説として、Youtubeで動画として英語であるが見られる。随伴は(余)単位射という自然変換のモナドの性質としても特徴づけられる【Ell05】
 例えば位相空間と単体複体の圏において、特異単体をとる関手と幾何学的実現をとる関手なんかが随伴になっているのだが、より基本的なものとして忘却関手と自由関手の関係がある。例えば、アーベル群から集合への忘却関手の左随伴はその集合から生成される自由アーベル群を対応させる関手であるし、位相空間から集合への忘却関手の左随伴は離散位相を入れた空間を対応させるもの、逆に右随伴は密着位相を入れる関手である。随伴の例は【Mac98】に豊富にある。
 随伴や(余)極限、逆射など圏論の基礎には一意的な射の存在がある。その一意性を考慮しない状況はホモトピー論の範疇である【LR10】