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Homotopy (co)limit


 PDF |ホモトピー押し出しホモトピー引き戻しProperness
     |ホモトピー余極限|ホモトピー極限|

 圏における通常の(余)極限とホモトピーは相性が悪いという話があった。つまり対象ごとのホモトピー同値(弱同値)は、(余)極限で保たれないのである。これを補うのがホモトピー(余)極限である。【DS95】の10章に載っている。押し出し(pushout)に限定してみると、例えば、

 

という可換図式を考えたとき、縦列はすべて弱同値である。しかし、この上下横列の押し出しを考えてみると、上列はS^nになるのに対し、下列は*である。押し出されたものはどう勘案しても、ホモトピー同値はおろか弱同値すらもいえない。
 (余)極限というのは、間手として考えるならば、Dを小圏としたとき、
であるが、Cがモデル圏でその情報をうまく引き継ぐようにC^Dにモデル構造が入れば、この導来関手(total derived functor)が考えられる。

 


である。これがhomotopy (co)limitと呼ぶのにふさわしいかと思うのだが、実際には違うらしい。詳しい事は「関手の微積分について」のサイトを見てみるとよい。ただし、考える関手が(コ)ファイブラントな条件を満たすときは、この導来関手と一致するらしい。より一般に、モデル圏よりも弱いホモトピー圏でホモトピー(余)極限なども考えられる【Shu06】。Enrichmentを考えることにより、重みつきのホモトピー(余)極限を考えている人もいる【Vok11】

 Homotopy (co)limitの定義は複雑だが、通常の(co)limitを(co)equalizerと考えると、その共通性が見えてくる。もうひとつ具体的な構成を考えるときはsimplicial spaceのrealization、cosimplicial spaceのtotalizationと考えるのが良いらしい。homotopy colimitの原文とも呼べるのは多分【BK72】であるが、これはhomotopy limitを主体に書いてある。Vogtの【Vog73】もあるし、【Vog77】ではhomotopy colimitとlimitの可換性を考えている。Small categoryのdiagramのhomotopy colimitはGrothendieck constructionというものが妥当のように思えて、それとhomotopy limitの可換性については【Cor00】が調べている。あとは、【Pup74】【CDI02】ではhomotopy colimitとfibrationについて考えている。
 簡単に言うならば、最初の図式でhomotopy colimitをとる、つまりhomotopy pushoutはdouble mapping cylinderに他ならない。と考えれば、上下のhomotopy colimitはどちらもS^nとなるのでweak equivalenceは保たれる。ちなみにhomotopy pull backはdouble mapping trackである。K. Brownはfibrationとweak equivalenceのみで、double mapping trackの性質に言及している 【Bro73】
 Homotopy colimitはsmall categoryの分類空間とも密接に関わってくる。一番顕著な関係はGrothendieck constructionとの関係である。これはsimplicial space levelで比べるとよくわかると【DH01】で述べられている。しかし、証明は【Tho79】を見ろとのこと。こちらの方が詳しい。

 ここでは一般のmodel categoryでは無く、位相空間に限定してhomotopy (co)limitを紹介してある。わかりやすい解説としては【Rie09】なんかや、練習問題として【Isa】を解けば理解が深まる。Model categoryにおける一般論を知りたかったら【Hir02】を見ればよいと思う。homotopy (co)limitは名前からしてweak equivalenceを保存してくれるかに思えるのだが、残念ながら一般的に全てそういうことではないらしい。条件として、図式のobjectが全てCでの(co)fibrant、あるいは図式のmorphismが(co)fibrationという条件がつく。よって、Strome typeの位相空間のcategoryはすべてのobjectが(co)fibrantなのだから、homotopy equivalenceはhomotopy (co)limitで保たれる。Quillen typeではすべてfibrantであるが、cofibrantはCWのretractになっている空間だ。しかし、位相空間の場合は特別で、この場合でもobject wiseのcofibrantという条件抜きにweak equivalenceを保ってくれるという【DI01】
 
 Homotopy colimitの定義域をΔ^opにした場合、それはsimplicial spaceを意味しているが、そのrealizationとの関係は気になる。定義的にhomotopy colimitもそのfunctorのsimplicial replacementのrealizationと考えれば、simplicial space levelで考えてみるのがよさそうである。homotopy colimitの場合n次には[n]から始まるΔのmorphismの分だけ余計である。これがnondegenerateなら、一本しかないのでもとのsimplicial spaceと完全に一致するのだが、identityが挟まれる分が余分にある。これがうまくつぶれるという条件をこめると、projectionから誘導されるBousfeild-Kan mapと呼ばれるnatural map
                

 


がweak equivalenceになる。この条件というのはReedy cofibrantというもので、一般的なmodel categoryでの議論を【Hir02】では行っている。

 Pushoutやpullbackに関する重要な情報として、properということが考えられる。これは(co)based changeによってweak equivalenceが保たれるかどうかについて言及されたものであるが、身近なmodel category、例えば位相空間やsimplicial set、DGMなどはproper model categoryである。というよりも、これはすべてのobjectが(co)fibrantだったりするので、(left)right properであることはすぐにわかる。
 【Hir02】で言うところのhomotopy push out(pull back)はここでいうdouble mapping cylinder(track)とは少し違う、がright(left) properなmodel categoryでは両者がnaturalにweakly equivalentになると書いてある。